|
|
|
|
 |
|
|
このホームページをご覧になっている医師を目指している学生の皆さん、医学生や研修医の皆さんには、将来自分がなりたいと考えている「理想の医師像モデル」がありますでしょうか?明確には思い浮かばないとしても、日本人であれば不滅の医師のヒーローである「ブラックジャック」の影響を受けてきてはいないでしょうか?「ブラックジャック」といえば、どんな難解な手術でもやってのけてしまうような、スーパードクターで、その高い医療技術と引き換えに高額の収入があり、さらには「正義の味方」であるという特徴があります。すでに原作者の手塚治虫は他界していますが、それでもなおこのヒーローの人気が絶えないのは、「ブラックジャック」が私たち日本人にとって長く「憧れの医師像」であるからにほかならないと思います。
「ブラックジャック」以降、たとえば最近でいえば「スーパードクターK」「Dr.コトー」「医龍」など、テレビやコミックで人気のヒーローが続々と出てきていますが、これらのヒーローも、「ブラックジャック」の医師像に少なからず影響を受けてきていると思われます。その理由は、これらのスーパードクター達はみな「修繕する医療のプロ」であるからです。私たち日本人には「治せる医師=良い医師」という価値観が根強くあるようで、それは近年ベストセラーとなっている「病院ランキング」などの本をみると、「手術の数や症例の経験の多さ=病院の実力」という前提で病院が評価されていることからもうかがい知れると思います。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
 |
|
|
残念ながら、地域病院で実際に働いている私にはそうは思えません。確かに、「スーパードクター」が地域の病院にもいてくれれば、その高度専門医療技術によって救われる人は出てくるかもしれません。しかし、実際に地域病院の医療現場で問題になっているのは、むしろ「どんな専門医療技術を用いても治せない」患者さんたちをいかにHappyにしていくかということです。たとえば癌のターミナルの患者さんや高血圧・高脂血症・糖尿病などの慢性疾患の患者さんなど、高齢化社会を迎えた現代日本の地域医療現場では、「修繕する医療(治す医療)」よりも「寄り添う医療(お付き合いする医療)」の方が圧倒的に活躍する場面が多くなっています。
コミックの主人公の「Drコトー」は離れ島にいながらも、大学病院の医師でも困難な手術でさえ行ってしまう「スーパードクター」です。「Drコト—」のように何でも治せてしまえばよいのですが、現実の医療現場ではそうもいきません。よく、癌になった患者さんががんセンター病院に紹介されますが、すでに治療不能な状態にまで進行してしまった癌の場合には、「緩和ケアをしてください」といわれて紹介状をもたされて地域病院を受診する患者さんが多くいます。また、手術などの治療ができたとしてもそれだけでおしまいではなく、術後のフォローなど患者さんとずっと寄り添っていく医療が必要になります。
もちろん、「修繕する医療」は必要ですし、大切です。それを追求する医師の存在も欠かせません。しかし、そういった医療だけでは現実は不足が多いということを頭においておく必要があります。
|
|
|
▲このぺ−ジのトップへ |
|
|
|
|
|
 |
|
|
「修繕する医療」を「専門医療」という言葉に置き換えるとするならば、「寄り添う医療」は「プライマリ・ケア」という言葉で置き換えられると思います。「プライマリ・ケア(Primary Care)」とは、「メディカル・ケア(医療)」と「ヘルス・ケア(保健)」を含めた総合的な医学です。人間を部品の寄せ集めと考え、一つの疾患だけの治療を考える「修繕医療」ではなく、人間を一つの全体としてみて治療する医学です。さらに地域を基盤として、継続的に展開される全人的かつ包括的な「保健・医療・福祉」の統合された活動も含まれます。医療の本来の目的は、人間と社会の健康と安全の保持であり、よくプライマリ・ケアとして間違って理解されている初期医療・救急医療や全科的医療はその一部にすぎません。いわば、安心して住み続けられる街を作っていくことが、プライマリ・ケアの役割であるといえるでしょう。
このプライマリ・ケアから、「家族」というユニット(単位)や「家族システム理論」などに焦点をあてるかたちでバージョンアップしたものが「家庭医療(Family Practice)」です。日本で初めて北海道に「家庭医療学センター」を開設した葛西龍樹先生(現福島県立医科大学教授)は家庭医療を以下のように定義しています。
| 「家庭医療とは、どのような問題にもすぐに対応し、家族と地域の広がりの中で、疾患の背景にある問題を重視しながら、病気をもつヒトを人間として理解し、身体と心とをバランスよくケアし、利用者との継続したパートナーシップを築き、そのケアにかかわる多くの人と協力して、地域の健康ネットワークをつくり、十分な説明と情報の提供を行うことに責任をもつ、家庭医によって提供される医療サービスである(葛西龍樹, 2002)」 |
家庭医療を言葉で定義すると、このように多くの項目を含みますが、米国オレゴン健康科学大学家庭医療学教授のJohn.W.Saultzは、その著書「TEXTBOOK of FAMILY MEDICINE」の中で「家庭医療の基本原則」として以下の5項目を挙げています。
① Access to care 医療へのアクセスが物理的にも、心理・社会的にも良好である
② Continuity of care 問題の経過中だけではなく病気の前後や健康時にもかかわる
③ Comprehensive care 生物・心理・社会的にどのような問題にも対応する
④ Coordination of care チームでケアを有機的に進める
⑤ Contextual care 患者の背景を追求し、地域・家族を含め全人的に理解する
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
 |
|
|
19世紀より前のヨーロッパでは、医師は内科医(Physician)・外科医(Surgeon)・薬剤師(Apothecary)と別々のルーツをもっていました。それが一旦統合されGP(一般医・総合医)へと発展し、科学の発達とともに医学の中にも専門科が分化し発展、小児科・産婦人科・耳鼻咽喉科などあらゆる診療科に分化していきました。ペニシリンを始めとする抗生剤の出現により、それまでは医療の主体であった感染症対策が落ち着いた後は、急性期医療から慢性期医療へと疾病構造が転換し、医療ニーズが変化してきています。さらには医療経済的な背景があり、費用対効果が高い効率のよい医療供給を求めて、新たな総合性を追求する専門科として欧米で家庭医療(Family Practice)が誕生していきました。
現在「家庭医療」は世界の100近い国々で共通の価値観として理解されています。そのほとんどの国々で家庭医療はそれぞれの国の保健医療提供システムの要であり、家庭医の養成は全国的規模で行われている事業となっています。日本では1985年に厚生省が「家庭医機能」を提示しましたが、政治的なコンセンサスが得られず「かかりつけ医制度」にすりかえられたまま今日に至っています。医師の卒後臨床研修必修化以降、プライマリ・ケア領域に医学生・研修医に関心が向いたのか、現在は日本家庭医療学会の会員数が指数関数的に増加し「家庭医ブーム」の時代が到来しています。
<家庭医機能:厚生省;1985年>
1. 初診患者に十分対応できること
〈1〉疾病の初期段階に的確に対応できること
〈2〉日常的にみられる疾患や外傷の治療を行う能力を身につけていること
〈3〉必要に応じて適切な医療機関へ紹介すること
2.健康相談および指導を十分に行うこと
3.医療の継続性を重視すること
4.総合的・包括的医療を重視するとともに医療福祉関係者のチームの総合調整にあたること
5.これらの機能を果たす上での適切な技術の水準を維持していること
6.患者を含めた地域住民との信頼関係を重視すること
7.家庭など生活背景を把握し、患者に全人的に対応すること
8.診療についての説明を十分にすること
9.必要な時にいつでも連絡がとれること
10.医療の地域性を重視すること
|
|
|
|
▲このぺ−ジのトップへ |
|
|
| 総会員数 |
1,258名 |
| 名誉会員 |
9名 |
| 一般会員 |
1,122名 |
| 学生会員(大学院生も含む) |
127名 |

|
|
|
|
|
|
|
|
|
 |
|
|
21世紀の日本を担う医師像モデルの一つとして、私たちは「ブラックジャック」とは別に上記の家庭医機能を備えた「家庭医」を提案します。もちろん、治せる病気は治した方がよく、「修繕する医療」を追求する医師「ブラックジャック(専門医)」は今も昔もこれからも必要ですが、そういった専門医と協力・協働して「寄り添う医療」に重点を置きながら総合性を追及していく医師、「家庭医」を「ホワイトジャック」と呼びたいと思います。私たちは地域に根をはって、「寄り添う医療」を追求し、安心して住みつづけられる街づくりを目指していきたいと考えています。
ー「修繕する医療」にとどまらず、「寄り添う医療」へ ー ホワイトジャック宣言!
この宣言をもって、私たちは「ふさのくに家庭医療センター」を設立します。
|
|
|
| 家庭医(ホワイトジャック) |
専門医(ブラックジャック) |
| よくある健康問題に対応 |
稀な疾患に対応 |
| 初期像から終末像まで対応 |
中後期像に対応 |
| 主として外来・在宅医療 |
主として入院医療 |
| エピソードを越えて継続 |
エピソードごと |
| 多数の患者 |
限られた患者 |
| 家族・地域の背景 |
生物・病理的背景 |
| 健康因を重視 |
病因を重視 |
| 個別健康維持・増進 |
集団検診 |
|
|
|
 |
| (White KL,Williams F, Greenberg B: N Engl J Med, 1961) |
地域住民1、000人の受療行動を調査したもの
赤線の左上の部分,地域住民の90%近いニーズに応えるのが家庭医
赤線の右下の部分に応えるのが専門医
|
|
|

|
|