患者さんはAさん54歳男性。食思不振、腹痛、下痢。仕事ができなくなり、市販薬などで何とか回復しようと試みていたが体調は増悪傾向し救急外来に受診。
CTで肝臓が非常に腫大しており、転移性肝臓癌の疑いがあり入院となりました。
もう一つの問題としてソーシャルバイタルサインがありました。職を転々とし、ネットカフェで暮らしをし、食事もコンビニで買うことが多いようでした。身寄りの方もいらっしゃらず。収入もほぼ無い状況だったので、SWが介入しました。
堀坂先生はAさんに対して「病院の一室が住まいで、自分を含めた医療者が人間関係の主な相手。なので家にお邪魔する気持ちを持つようにした。医者患者関係というより、本音や雑多なことを話しやすい人でありたいと思い」接する時間を長くとりました。確定診断が中々付かない時でも、Aさんに寄り添い不安を聞いていました。
困難な患者さんに向きあう姿は病棟スタッフにも伝わっていました。
癌との診断がつき、研修では初めての癌告知をしました。
初めに結論の「癌である」ことを明確に伝えることと、できる限りの援助をしていくという意思が伝わるように意識したそうです。告知後は、動揺や不安を感じさせるような発言は聞かれませんでしたが、一時不眠がありました。しかし数日して不眠は聞かれなくなりました。段階的に悪性疾患であるということを伝えていたことから、極端に落ち込むことなく適応されたように思われました。
この経験を通して
「進行癌の患者さんであり一言の言葉かけすら難しく、自分の不器用さを感じる日々だった。指導医の先生方は、伝えるべきことは伝えるが、むやみに落ち込ませることはしないという絶妙なバランスで向き合っておられるということを知った。告知では準備した以外のことを聞かれると全く分からないなど反省点は多数あった。また、悪性疾患の病状説明の難しさを感じた。いつになったら自分の心を揺るがさずに行うことができるのだろう。」
と学んだことが話されました。
最後に、Aさんの背景として「ネットカフェ難民」が増加していること(2007年時点で約5400人、6割が日雇い労働または派遣労働者との報告(厚労省))。
Aさんのような非正規労働者数はいまだに年々増加しており、現在はさらに増加していることが予想される。
そうした方の生活習慣(肉食、飲酒、高脂肪食、腸内細菌叢の変化、運動不足など)が大腸癌のリスク因子とされており、社会が作り出した病ともいえるのではないだろうかとAさんのだけではありませんが疾患と社会的背景にまで踏み込んだ報告がされました。
堀坂先生、お疲れ様でした。
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