船橋二和病院では、初期研修医の各科ローテションのまとめとして、「こころに残った患者症例報告」を行っています。
8月の下旬ごろ、初期研修1年目の医師が最初に担当した内科病棟を振り返り報告を行いました。4人の初期研修医の報告の中で、今回は小黒医師の「ここのこ」をご紹介します。
小黒医師は今回の症例発表に、初めて担当した患者さんの報告をしました。
船橋二和病院では、初期研修医の各科ローテションのまとめとして、「こころに残った患者症例報告」を行っています。
8月の下旬ごろ、初期研修1年目の医師が最初に担当した内科病棟を振り返り報告を行いました。4人の初期研修医の報告の中で、今回は小黒医師の「ここのこ」をご紹介します。
小黒医師は今回の症例発表に、初めて担当した患者さんの報告をしました。
患者さんは80代の女性で、入院3か月前に転倒がありその後に発覚した腰痛とそれに伴う体動困難を主訴に他院の救急外来を受診し、そのまま二和病院へ入院となりました。病前は独居生活でADLは自立していました。
検査の結果で骨粗しょう症であること、腰痛は転倒による腰椎圧迫骨折と診断されました。骨粗しょう症と疼痛に対して薬物療法を開始しましたがせん妄症状が出現。その際に小黒医師は国家試験の勉強で「幻覚や妄想がある患者さんが話したこと(の言葉)を否定してはいけないこと」学んだことを思い出しましたが、実際に患者さんを目の前にすると対応の判断が難しく、結果的に患者さんの言葉を疑うような対応をしてしまったそうです。
これまでの患者さんとの関わりで築かれた信頼関係が、この行動で少し失われた部分が出来てしまったと感じました。このことが患者さんの不安への向き合い方を考えるきっかけになったそうです。その後、せん妄の原因を見つけるため精神科医師に相談した結果、疼痛管理に使用していた鎮痛薬を中止するなどの対応が必要となりました。
症状が軽快し、退院が見えてきたところで課題となったのはご本人の希望とご家族の希望の不一致でした。患者さんは認知機能テストでは異常がなく、自宅退院が希望でした。一方でご家族は患者さんが自宅で転倒を繰り返していたことや、実生活での認知機能の不安もあり施設への退院を希望していたため、患者さん本人のQOLとご家族の安全面の心配で退院調整が難しくなっていました。
最終的には「年齢的にこの後のことを考えて住み慣れた自宅で過ごしたい」という思いを尊重して、ご家族の理解を得て自宅退院となりました。
この症例を通して小黒医師は「入院時の急性期から退院調整に至るまで一貫して患者さんを診ることが出来たこと。患者さんの痛みや不安に対して気づくことと、それに対して医師がどのように向き合っていけば良いのかを学ぶことが出来た」とまとめています。
病棟師長からは「病気を治療することは医師の役割の一つだが、一方で病気を抱えたまま生きていかなければならない患者さんもいる。そうした患者さんにどのように向き合うか、学べた機会になったのではないか。」「1年目ではあるが、自分達がどのような方針を患者さんに持っているか、アピールしてもらいたい。困った時は多職種に聞いてもらえれば、別の視点からの意見も出ると思います。」とアドバイスをいただきました。
また、指導医の白井医師からは「この患者さんについて、研修医自身が考えて学ぶことができたことが素晴らしく、研修のあるべき形だと思う。」「発表の通り、高齢者の場合は完全な治癒が難しいケースも多く、ケアについても医師が考慮に入れる必要がある。」「簡単に施設退院を目指すのではなく、患者さんの思い寄り添った結果、自宅へ退院できる結果になったのだと思う」と振り返りがありました。
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