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船橋二和病院 初期研修

「医師になって良かった!」研修中に出会った患者さん症例報告会

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医師になって良かった!こころに残った患者報告会

◆「ここのこ」 聞き慣れないフレーズですが、何だかわかりますか?

~なぜ「症例」発表ではなくて「心に残った患者さん」の発表なのか…??

私たちの病院・診療所では、研修医が1つの科の研修が終わると自分の「心に残った患者さん」(略称“ここのこ”)を、発表します。

なぜ「症例発表」ではなくて「心に残った患者さん」なのでしょうか?
一番は研修医として患者さんとどう向き会ったのか、を私たちの研修では大切にしているからです。
さて、今回の「ここのこ」はどんな内容でしょうか…。

 

◆病院を支える地域の方々も参加する

会場は、満員御礼。医師や看護師など関わった職員だけではなくて、事務や地域の方々も参加します。
本日の発表は、外科研修を終えた I先生の「心に残った患者さん」。

医師になって良かった!こころに残った患者報告会

◆ Mさんについて

 Mさんは進行癌の患者さんで外来にて胃癌の告知。オペをして食思不振が改善されました。
しかし、リンパ節転移の告知を受けてから、「自分には家族もいないし、もういいんだ。皆さんに迷惑をかけずに死にたい」と、かなり悲観的でやや自暴自棄になり、決断することから逃げている様子。

 

とにかく頻繁にベッドサイドに足を運び、傾聴。補助化学療法(抗がん剤治療)のメリット・デメリット等の客観的情報を提示しつつ、Mさんがどうしたいのか、気持ちを探りました。対照的な性格の姉は化学療法法(抗がん剤治療)を行う様に強く本人を説得。気迫に押されて化学療法を「やります、お願いします」と応えたものの……姉の気迫に押されて「やります」と言わされた様な印象を受けました。

 

いつもの様に病室を伺うとMさんから一言。
「抗がん剤をやってもやらなくても、再発するときはするし、しないときはしないと思う。だからやっぱり抗がん剤はやめて、1日1日を過ごしたい。再発や、死への覚悟は出来ている」
 今まで事ある毎に決断から逃げてきて優柔不断だったMさんが、初めて自分自身で考えて決断した。その時のMさんの表情には、投げやりな様子など無く、何かを悟った様な、この先の自分の余生に対して前向きな顔つきがみられました。

 

◆僕はMさんの決断を大事にしようと思った。

 

退院後の外来受診も任せて貰い、自分が対応しました。

Mさん外来受診。好きなモノを食べ、好きな事をして過ごしている。「自分の足で歩いているって気がする」と。表情は明るく、毎日元気に過ごしている姿を見ることが出来て安心しました。

 

◆今回の症例を通して…、

 I先生は『指導医からは「話し方が固い、自分の言葉で」と言われていたので、初めて「自分の言葉」で告知しました。患者さんの人生の全てを背負うことは出来ないけど、Mさんの主治医にはなれたのかな、と思いました。Mさんに出会えて、医師になって良かったな、と思いました』と。

 

指導医からは
「患者さんの所に良く足を運んでいた様ですね。(検査)画面で処理するのでは無くて、患者さんと真剣に向き会っていたと思います。外科は手技や技術もしっかり出来なければならない。患者さんと向き会う事と同じくらい研修して下さい」
看護師からは
「私たち看護師よりも(患者さんに)寄り添っていました。誠実に向き会っているのが伝わって来ました。ここでしか経験できない研修ができたと思います」。

 

「医師になって良かった」と思える様な“こころに残った患者さん”、研修の間に会えると良いですね!

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