医師をめざして勉強している医学生にとって、気になる問題の一つは“医師として働き続けること”ではないでしょうか。生き生きと自分らしく、家庭とも両立しながら働くにはどうすればいいのか――?医学生が現役女性医師に本音の疑問をぶつけてみました。
聞き手:戸田さや香さん(東京女子医科大学2年生)
医師:大前 綾さん(小児科医、船橋二和病院勤務)
医科大学に通う2年生です。日本の女性医師の割合が国際的に見て低いことに疑問を感じているし、女性医師は未婚・離婚・結婚が3分の1ずつという〝3分の1法則〞も気になっています。
2004年に大学を卒業して、小児科医として年目になります。福島県立医科大学を卒業後、地元の千葉県に戻り、初期研修・後期研修とも船橋二和病院(以下、二和病院)で、そのまま就職。学生時代は硬式テニス部で、テニスに明け暮れていました。
大前先生が小児科を選んだのはいつ頃ですか?
私は、医師を志した時点で小児科を志望していました。そもそも、子どもの成長や発達に関わる仕事がしたいと思っていて、いろいろな職業を調べる中で、小児科医なら子どもの心も体も診ることができると思ったんです。研修で他の科も回り、それぞれの良さを感じましたが、やはり小児科医がいいなと。
実際になってみて、どうでしたか?
子どもは、体調が良くなるのも悪くなるのも早く、時間外の対応を求められることも多いといった難しさもあります。でも、乳幼児はお母さんが大好きなので、女性のことはあまり怖がらない。女性であることは小児科医として大きなアドバンテージになっていますね。お母さんとの関係が築きやすいのも女性ならではかな、と思います。
二和病院を選んだ理由は?
二和病院を知ったきっかけは?
出会いは高校生の時の1日医師体験でした。大学5年生の時には、喘息児向けのサマーキャンプ(※)に学生ボランティアとして参加しました。このキャンプは、自分の病気や予防について知り、何もかも親の言いなりではなく子ども自身が病気を理解し、自分でうまく病気と付き合っていくこともねらいの一つでした。
へぇー、面白そうですね!
キャンプの時に、医師と看護師の距離が近くていいな、と感じたのも大きかったですね。5年生は実習で病院を回り始める時期で、いろいろな病院を見る機会があるのですが、二和病院はアットホームで、医師と看護師が対等な立場で意見を言い合っているし、良い雰囲気だなと。病院全体が顔の見える関係で、皆が同じ方向を見ている。しっかり育ててもらえそうだし、成長できそうだなと感じました。
大前先生は、初期研修の時にお子さんを出産されたんですよね。お相手とは、どこで知り合ったんですか?
同じ大学の1年後輩でした。私が6年生の時に付き合い始めたのですが、同級生や先輩の中には、低学年の時から付き合っている人もいましたよ。
相手が医師だと、仕事の悩みなども理解してもらえそうですね。違う職種の人と結婚すると、生活サイクルが違って苦労するのかな...?
医師以外の人と結婚している女性医師も大勢いますよ。うまくいく方法は一つではないと思います。私自身は、急な呼び出しなどがあっても理解してもらえることはありがたいですね。でも、それは同業者でなくても可能です。結局、職業より「人」なのでは?
そうですよね。ところで、大前先生は学生の時、「いつ頃、結婚しよう」と考えていましたか?
考えても、そうはうまくいかないのよー(笑)。
よく言われるのは、子どもを産むなら実習が始まる3年生がよくて、それだと2年生までには結婚しないといけないから、1年生で彼氏がいないと...。
私の頃は、学生結婚は珍しかったですが、学生や初期研修のうちに結婚・出産する人もいたし、医師として年ほど働いてから結婚・出産する人もいます。ただ、男性医師は「研修医の間は身分も不安定だから結婚しようとは思わない」という人もいるでしょうね。
出産・子育てしながらの研修は大変でしたか?
あっという間で、よく覚えていないの(笑)。ただ、医師として早く一歩を踏み出したいという思いはありました。夫も忙しく、生まれたばかりの子どもと2人きりの時は、「社会から取り残されている」という疎外感もありましたよ。でも、そうした経験は、仕事の中で生かすことができています。出産後に情緒不安定になるお母さんの気持ちなども理解しやすいです。
出産による焦りはなかったですか?
ありましたよ。当直を多くやれれば、それだけ難しい・珍しい症例を知って経験が積めるような気がしていたし、「子どもを産んだ分、遅れちゃったな」と思いました。でも、その遅れが医師としての〝差〞になっているかというと、そんなことはない。ほんの数年の遅れなんて、医師としての長い人生から見れば、ほとんど関係ありません。
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