千葉民医連では、初期研修医の研修科や病院・診療所のローテションが終了するごとに
「心に残った患者症例報告会」を開催しています。
今回は、千葉健生病院での3か月間の研修を終える初期研修医の報告。
千葉民医連では、初期研修医の研修科や病院・診療所のローテションが終了するごとに
「心に残った患者症例報告会」を開催しています。
今回は、千葉健生病院での3か月間の研修を終える初期研修医の報告。
糖尿病と高血糖で他院かかりつけでしたが昨年2月に終診、同時にアルツハイマー型認知症を指摘されていました。白内障の進行で目が見えない状況でしたが、血糖コントロールが出来ず、認知症から治療や清潔への理解が得られない事から手術は困難と判断されていました。
昨年8月から千葉民医連診療所の訪問診療を開始、食事がままならず、糞便でご自宅の衛生環境も悪い事から、糖尿病の治療と生活環境改善のため千葉健生病院に入院となりました。
独居でご家族とは疎遠。全盲で寝たきりであり、排せつをトイレですることが出来ない状況です。
「教えてくださいここはどこですか?」「お腹がすいたんです、何か食べるものはありますか」「ぼくは目が見えないのだけれど、これは前からなのかな?」などなど…
見当識障害と記銘力低下があって、同じ質問が繰り返されました。
入院翌日、病室に便が飛び散っており、病衣やシーツの交換など看護師さん6人がかり。不穏があり、介護に対しては暴力的に強い抵抗を見せました。
指導医とも相談。一般病棟で治療を継続することは困難と判断し、精神科病院への転院を打診し2週間ほどで退院となりました。
この症例について研修医からは
「同じ内容の質問の繰り返し、呆れたり困ったような口調に対し一時的に嫌気がさしてしまった。振り返れば相手への理解不足が原因だったのでは無いか。ご本人の行動は、認知症や視覚障害もあり、今どこで何をしているかが分からず、糖尿病での感覚低下や過敏、空腹感も相まって、自分を守るための行動だったのではないか。また、ご本人独特の話し方は周囲に向けられたというよりは、自分自身の状況に途方に暮れていたのではないか。」
「どうすればこの患者さんに歩み寄れたのだろうか」
また治療の方針について臨床倫理4分割法で考えた結果
ご本人にとって「生活環境が整っている事が最善」と考えれば、その時点では入院環境という選択肢が最も良いのではないか?認知症として精神科に転科し、ゆくゆく施設入所となった場合は、自宅で独居という極めて困難な状況にならずに済むのではないか
との振り返りでした。
この報告に対し指導医からは
「ご本人の考える良い状態と、医療者が考える良い状態との乖離が非常に大きい症例で、入院治療自体が、訳のわからないところに連れて行かれて、理解できないことをされるという認識と、それに対する不安がとても強く難しい症例だったと思う。」「私自身もこの対応が果たして良かったのかと、これからもずっと考えていく症例だと思う。」
との感想がのべられました。
最後に千葉健生病院での研修を振り返り
「自分が高校生で医師体験に参加した時に、医師の仕事を丁寧に語ってくれた先生に、今度は指導医と研修医として研修することが出来、医師としての一生の財産になったと思う。」
「良い医師になれるか?何が答えか迷うのではなく、良い医師になる・答えを見つけると決めて日々研鑽していくしかないと今は思っている。」
「千葉健生病院は、患者さん思いの病院であり、こういう病院が地域を支えているのだと実感し、みなさんから学ばせていただいたことを、この先で会う患者さんに返せるよう精進していきます」
との感想でした。
三か月間の中身の濃い研修おつかれさまでした。次の産婦人科研修も頑張ってください!
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